EMPREINTES - BRUNO ANGELINI

高雅にして憂愁の旋律美と色彩感の移ろい。SKETCHがまた新たなピアノ・トリオ美学を提供してくれた！

どこか高雅なたたずまいとメランコリアを気に病むような様子が見え隠れするような導入部に、ぼくは喜悦を覚えた。とってつけたようなありきたりの社交辞令なんかいらない。SKETCHを聴くのに、御愛想を振りまかれても困ってしまうのだ。

1曲目のブルーノ・アンジェリーニのソロ・ピアノは謎めいていて素敵だ。聴き上手なベースとドラムスの繊細な気配りに導かれるように、2曲目のトリオ演奏でアンジ ェリーニは突如、抒情美の権化へと変貌する。アンジェリーニのオリジナル曲（全曲）は後期ロマン派～印象派へのシンパシーがうかがわれる曲想が多い。冒頭と終曲に置かれたソロ・ピアノ演奏にそれが如実に現れている。2曲目～8曲目のトリオ演奏では、香り豊かな花園で3人が共に戯れるがごとき色彩感と旋律美の移ろいに心奪われる演奏になっている。

百戦錬磨、欧州屈指のベース奏者リカルド・デル・フラが洞察と閃きをもとに添えたカウンター音やパッセージがアンジェリーニにフィードバックし、魅力的な楽句の胚芽となり開花する。SKETCHはまた新たなピアノ・トリオの美学のありかたを教えてくれた。