WHAT IT SAYS - MARC COPLAND, GARY PEACOCK

抒情派ピアノのコープランドがベースの巨人ピーコックとともに結晶させた『ポエティック・モーション』の新局面

マーク・コープランドのピアノ・ソロ作『ポエティック・モーション』（Sketch）は、新しい感覚のハーモニーを創成する才能が称賛され、フランス印象派絵画を引き合いに出して語られたり、知的抒情美と形容されたりして、たいへん話題になった。色彩的変化を継起させていく手腕や、優美・甘美なオリジナル・メロディをさらっと提示するクールなフィーリングや、野暮ったい起承転結にはまらない流れのつくりかたがあいまって、とても新鮮な世界が描き出されていた。

新しいSketch盤『What It Says』では、コープランドのポエティックなモーションの新たな発露と出会うことができる。今度はベースの名人であるゲイリー・ピーコックとのデュオ・アルバムだ。キース・ジャレットの助っ人的なイメージができあがっているピーコックだけど、ここではサイドマンではなくてコープランドと名実ともに共同主体となっている。ふたりとも冷静沈着に互いの音を聴く中で音色やリズムや音の強度の変化・持続・反復をコントロールしながらも、エモーションや直感をないがしろにしない。

カット面の多い宝石は注がれた光彩の加減でうるわしい綾をともなって照り返すものだ。コープランド、ピーコックという名のふたつの優れた宝石はそうした相互作用を可能にしている。緻密だけど硬直していない、ロマン性や抒情性を感じさせる芳醇なジャズになっている。