5. 「澤野茶房」オープンなるか!?

北見 これは言っておきたいんだけど、澤野工房って「レーベル」じゃなくて「ブランド」なんですよ。要は、《hand-made JAZZ 澤野工房》という例のシールをジャケットに貼ることで、澤野さんはブランドづくりに成功したと思うわけ。お客さんに「このシールが貼ってあればハズレなし」という安心感を与えたんだから。強力なレーベルカラーで束ねられているわけではない。むしろレーベルとしては「聴いて心地よかったらええやんか」という縛りしかない。だからこそ続いてきたんだと思います。

稲田 ジャケットのデザインも、このシールを貼ることを前提に考えてますし。

澤野 シールのデザインを考案してくれたのは北見さんなんだけど、これがここまで重要な意味を持ってくるとは当時思ってなかったね。ほとんど思いつきで始めたことやった。

北見 しかし20年、よう続いたな。

澤野 「すぐ潰れるからやめとけ」と北見さんにも言われたね。

北見 本のインタビューでも言ったけど、感謝せなあかん人がたくさんおると思うで。ご家族はもちろん、歴代スタッフやデザイナーさんにとにかく恵まれてた。最近の作品では、稲田さんの貢献がとても大きいし。

澤野 ホンマの話ね、2010年に稲田さんと出会ってへんかったら澤野工房はなくなってたかもしれへん。レーベルの内部でいろいろあって、「もう続けられへんかも」と思ってた時期やったから。

稲田 最近のトヌー(・ナイソー)さんの三部作とかは北見さんと僕で好きなようにやらせてもらって。とにかく「作ること」が楽しいから、僕も感謝してます。

北見 ところでこの本の最後で「ジャズ喫茶をやりたい」と言うてるけど、ホンマにやる気あんの?

澤野 もちろんあるよ。やり方をどうしようか迷ってるけど。

稲田 10年近く前から言い続けてはるけど、具体的にどういうスタイルを想定してるんですか?

澤野 小難しい場所にはしたくないんです。

北見 でっかいホーンスピーカーと向き合うように座って、腕組みして聴くみたいな旧態然としたジャズ喫茶ではないわけや。

澤野 そう。僕としては敬老会みたいな場所になればええなと思ってるんだけど(笑)。でも音にはこだわりたね。「澤野さんの言うてる“心地いい音”ってこういう音やったんや」と分かってもらえるような場所にしたいと思ってます。

稲田 水を差すようでアレですけど、実際に喫茶店という形態にするとなると、いろいろ面倒な事務手続きとかありますよ。

北見 こないだ「新世界宵市場」の時にFacebookの動画でも提案さしてもらったけど、サロンみたいなスタイルにしたらええやん。澤野工房の事務所とアンテナショップを兼ねたスペースで、コーヒーはセルフサービス。で、たまにそこで試聴会やミニ・ライヴもやる。それでやろうや。

澤野 ヤバいなぁ、大丈夫かなぁ……。

北見 大丈夫やろ。今まで十分ヤバい状況を乗り越えてきてんから(笑)。「サロン・サワノ」、来年からはそこを拠点に発信していきましょう。

稲田 「澤野茶房」でもいいですけどね。こういうのは宣言してもうた方が楽になりますよ。

澤野 分かりました。「澤野茶房」のオープンに向けて頑張ります(笑)。

 

2018年8月21日 新世界「喫茶 通天閣」にて / 取材&構成:伊藤 隆剛)

 

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