刊行&重版出来記念トーク・セッション
『澤野工房物語』の行間から読み解く、澤野工房の真実!?
●参加者メンバー
澤野 由明
「さわの履物店」の4代目店主にして澤野工房代表。自身の半生とレーベル運営の哲学を語り下ろした『澤野工房物語』をDU BOOKSより刊行。現在は『サロン・サワノ』のオープンに向けて画策中。
北見 柊
演劇関係の本業の傍ら、澤野工房作品のライナーを多数執筆。レーベルの発展に大きく貢献している。澤野工房の商品に必ず貼られる《hand-made JAZZ 澤野工房》のシールをデザインしたのも実は北見さん。
稲田 力
澤野工房の外部ブレーンとして、企画・制作進行・ジャケットデザイン・販売等の幅広い業務に関わっている。
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北見 出ましたね、『澤野工房物語』。しかしここで語られている内容は、いわゆるサクセス・ストーリーではないよね。
澤野 そうですね。言うたらこれはただの「継続物語」です。僕は昔から、続けることだけが得意な人間やったから。
北見 下駄屋という生活の基盤があったからジャズの仕事を続けることができたのは間違いないわけで、裸一貫からレーベルを立ち上げて成功したという立身出世物語でもない。
澤野 ええ。もちろん苦労はしたけれども、ゼロから起業する人たちよりもそこは恵まれてたと思います。
北見 今日話したいのはね、そういう本筋とは別のところ。本の内容が澤野さんの目線で語られた「正史」としたら、そこで語られていない「外史」と言ったらいいのかな。近くで見続けてきた私とか稲田さんにとっても、それぞれの『澤野工房物語』があるわけ。そのへんを肉付けする意味で、本には私や稲田さん、フィリップ(・ギルメッティ、スケッチの元オーナー)、澤野ブラザーズの弟の稔さんのインタビュー、あるいは私が以前書いた「澤野工房外伝~ジャズ者 仁義なき戦い~」の一部も載せてもらったけれども、私はまだ全然話し切れてないのよ(笑)。澤野さんも本の中では語れなかった本音とか、いろいろあるでしょ?
澤野 あるある。本にはコワくて載せられへん失敗談とかもいっぱいあるしね。
北見 そういうことを、ざっくばらんに話しましょう。それともうひとつ、世間における澤野工房というレーベル、澤野由明という人のイメージが、私から言わせるとかなり偏ってて、ある種の「サワノ幻想」みたいなもんが出来上がりつつあると思うんです。だから今日は、私が前から気になっていたことをいろいろ訊問しながら、本当のサワノの一部だけでも炙り出せたらいいなと。
澤野 訊問か……コワいな。お手柔らかにお願いします(笑)。