ヨーロッパから又一人、新しい才能を見つけました。10月のASシリーズは、豊かな感性で今後も期待大の気鋭のミュージシャンをご紹介します。ドイツを拠点に活動しているベーシスト、ネジン・ハヴァネシアンの新録です。
作品全編にわたる静かな緊張感が、作品に硬質で温度感が低いイメージを与えています。ですが人を寄せ付けない冷たさではありません。完璧なバランスの直線で構成された、壮大な建造物の美しさに圧倒されたときの充実感に似ています。1976年生まれのハヴァネシアンの確かな技量は、グループの完成度を確実に引き上げ、それぞれのパートは絶妙な均衡を保っています。
流れるような旋律の中に鋭さを感じさせる演奏には、一瞬の閃きでしのぎを削りあうセッションにミュージシャンが全てを賭ける「ジャズの精神」と、色んな音楽のエッセンスが醸成した「ジャズの新たな美しさ」が感じられます。それらが彼らのオリジナル曲に、聴き手の心を掴む何かを与えているのでしょう。
ミュージシャンも聴衆も音楽をジャンルで明確に分ける時代を経て、新たな楽しみ方や探し方、表現が受け入れられるようになった今、その幸せを静かにかみ締める事が出来るアルバムです。1曲1曲、じっくりと聴いて下さい。