本日のライブの会場reservoir(レゼルヴォワール=貯水池・タンク・貯蔵所の意)はパリ11区、8号線ルドュー・ロラン駅徒歩5分ほどのところにある。昼から飲まず食わずで買い物をしていたので、腹ごしらえにチーズ4種類の入ったパニーニと紅茶でエネルギー補給。フォージュ・ロワイヤル通りを北に少し進んで左手の、1階が黒塗りの建物、会場に着いたのは開始予定時刻の8時半だった。
パリのライブスポットというと、2年前のDVD撮影の時に同行した2軒「デュック・デ・ロンバール」「サンサイド」しか知らないのだが、比べ物にならない広さだった。サンサイドの3倍はありそうだ。あそこはものすごい「うなぎの寝床」である。(ちなみにパリで発行されている日本語無料新聞「OVNI(オヴニ)」のバックナンバー2000年の455号によると、1995年に織物製造工場を改装してオープンしたそうだ。)
正面が舞台で、その左右に牢屋……ではなく巨大な鳥籠(多分予約席かVIP席)がある。カーテンがついていて、他とは違いソファー席。右側は無人で、左側はカーテンが引かれミュージシャンの控え室に使われていた。見上げると、天井にはミラーボールも。この場所はジャズライブ以外にも様々な用途に利用されているそうだ。左手の壁側にバーカウンター。普段は分からないが、その日はワン・ドリンク制ではなかった。ライトの当たっているステージ以外は薄暗い。カウンターは寒色の間接照明、客席の明かりは卓上のローソク。私たちは舞台に向かって左手の最前列、ピアノの前のテーブルについた。柱がちょっと邪魔だけれども、ミラバッシの指までばっちり見えるだろう特等席。日本なら真っ先に無くなりそうな席なのに!
ものすごく雰囲気のある会場で、ここでDVDの撮影をしたら面白いだろうなぁなどと考えていたら、本当に撮影している人たちがいた!今回のカルテットでフィーチャーされている、サックス奏者ティム・ホワイトヘッドの撮影でイギリスからやってきたチームだ。気がついただけでも、カメラは5台入っていた。平日の夜ということもあってか、開演時間になっても観客の数は多くなかった。おそらく30分位遅れて始まるのが普通なんだろうな。しばらく始まりそうにもないので、免税店で買ってきた大吟醸を叔父がミラバッシに渡しに行った。ジョバンニ・ミラバッシ・カルテット・フィーチャリング・ティム・ホワイトヘッドのライブは、結局55分遅れで始まった。



ミラバッシの登場だ。今回もDVD撮影の時のようにヒゲがある。ホワイトヘッドがグレーのスーツでしっかりきめているのと対照的に、残りの3人はラフな格好だ。1曲目が終わったところでミラバッシのメンバー紹介。2曲目が「Des jours meilleurs」。やっぱり自曲を演奏するミラバッシはいい。ベースが5弦なのを叔父が発見した。ミラバッシのソロから始まった3曲目は「You don’t know what love is」。この曲は彼のDVD『LIVE at SUNSIDE!』でミラバッシの演奏を視聴できる。
4曲目が始まるところでようやくYが友人を連れて登場。後ろの方に立っていたところを見つけて、席まで案内した。ライブ中なのでお互い簡単に名前の紹介をする。Yの友人はHさんと表記させてもらうことにしよう。4曲を演奏し終わった後でミラバッシが、ファーストセットが終わったこと、少しの休憩の後、セカンドセットを始めることを伝えてメンバーがステージ左手に退場する。っとそこでミラバッシが、突然メンバーをステージに呼び戻すハプニングが。もう1曲演奏するはずだったのを忘れていたらしい。ほんまかぁ?故意か天然か分からずじまいだったが、多く聴けることに異議はない。観客には大ウケだった。
休憩は30分程。ミラバッシが席まで大吟醸のお礼を言いに来てくれた。重たいけれど持ってきてよかった。ドリンクは強制ではなかったけれど、せっかくだからとカウンターで各々アルコールを頼む。短い休憩時間は話しているうちにあっという間に終わってしまう。11時にセカンドセットが始まった。
ホワイトヘッドはファーストセットで着ていたジャケットを脱いでいた。最初の曲はピアノとサックスのデュオで「Imagine」。ミラバッシは『AVANTI!』で弾いているし、ホワイトヘッドはイギリス人なので、この選曲には納得。次の曲「Barcaroll」からドラムとベースが参加。アルバム未収録曲の「Barcaroll」は、アトリエ澤野コンサート2004の最終日、東京公演でのみ演奏されている。東京公演で思い出した。受注処理担当の同僚がお気に入りの「Un dimanche de pluie(『ARCHITECTURES』の1曲目)」をリクエストしたところ、しばらく演奏していなかったので本番では実現しなかったけれども、リハーサルで弾いてくれたのだ。その心意気がとてもうれしかった。
MCの後3曲目が「Ladies in mercedes」。ピアノの高音が耳に突き刺さる感じ。前のめりで演奏しているため、椅子が浮いて踊っているように見える。再びMCが入るが、曲名を聞き逃してしまう。4曲目が終わって、またMC。これまでMCはすべてミラバッシがやっていたのだが、今回はベースのMCだった。ミラバッシの紹介と、次の曲名が「Tot ou tard(トットゥ・タール=遅かれ早かれの意)」で、ミラバッシの曲だと告げられた。叔父が持って帰ってきたカルテットの未発表アルバムで聴いた事がある。ピアノ・トリオで聴くよりも管楽器入りで聴きたい格好いい曲だと思う。記憶に残るメロディーで、私はクータンスに行っている間もことあるごとに鼻歌で歌っていた。11時45分にセカンドセットが終了。アンコールでカルテットのメンバーが登場し、ホワイトヘッドのMCの後、曲はサックスのソロから始まった。アンコール曲についてMCでホームレスがどうとか話していた気がするのだが、曲名聞き取れず。静かな曲だった。
ライブは日付変わる少し前に終了。YとHさんはすっかりミラバッシファンになっていた。メトロの終電時間が迫っていたので、ライブの話をしつつ駅まで急ぐ。乗り換え2つで着くはずが、8号線は夜間工事のため毎日8時半に運転終了しているというアナウンスが繰り返し流れていたため、ルートの変更を余儀なくされる。パリのメトロは結構平気でこういうことをするので困る。乗換駅だろうが工事のためには駅ごと閉鎖するし。日本だとせいぜい一部閉鎖だろう。何とか遠回りして帰ることができた。
翌日からはいよいよクータンス。3泊4日の滞在でまたパリの同じホテルに戻ってきて、翌朝帰国というスケジュールだ。機中泊で0泊2日。日本につくのはさらに次の昼。とにかく3泊分の荷物を詰めてから眠った。